職場におけるフィードバックとは?
フィードバックという言葉を聞くと、みなさんはどのような場面を想像しますか?
多くの職場では、人事面談、いわゆる評価のプロセスでフィードバックを使っていることが多いのではないでしょうか?以前、日本で勤めていた会社では、公式なフィードバックは、半年に1度ほど上司から部下へと言うかたちで、一方的に行われていました。
毎年決まった形で行われるプロセスのため、私自身はこの機会を形式的に受け止めており、あまり積極的に参加できていなかったかもしれません。しかし、アメリカで学び、働く中で、フィードバックをすること、受けることについて、深く掘り下げて考えるようになりました。
アメリカにある私の職場でも、日本と似た形で人事評価のプロセスが行われているものの、一つ大きな違いは、マネージメントの立場にいない私も、同僚から上司まで様々な人にフィードバックを出すこと・受けることが求められます。
上司が一方的に評価をするのではなく、日々業務に携わる人々から多面的なフィードバックを受けるこの仕組みは、多面評価(360度評価)と呼ばれています。多くの企業や団体では、主にマネージメント層の社員に用いられているようです。
さらにアメリカでは、日常的に行われるインフォーマルなフィードバックの文化も根付いているように思います。以前、職場のコミュニケーションに関する記事で紹介したように、一人一人のオフィスは独立しているため、コミュニケーションの工夫は必要であるものの、みんな上司や同僚と話す時間を定期的に取っているようです。
今回は、アメリカでキャリアを築く一会社員の視点から、このフィードバックの文化について振り返り、フィードバックを受けること・することのメリットをお伝えします。
フィードバックを受けることの2つのメリット
1 : 他者目線での自分を知ること
部署内、または部署を超え、様々な形で関わる人からフィードバックを受けることのメリットは、何と言っても自己開発と能力強化にあると思います。
上司が何人の部下を持っているかにもよりますが、マネージメント層は様々な業務に忙しく、部下の特性について100%把握した上でフィードバックをできているとはとても言い切れないように感じます。
会社員である限り、私たちは同僚、先輩、後輩、部下、企業内でのクライアント的な立場の人々など多くの人と関わります。
できるだけたくさんの人から建設的なフィードバックを得ること、必要であれば受けたフィードバックについて話をすることは、自分の評価と他者評価を比べるきっかけにもなり、そこから多くの気づきを得ることができます。
2: 第三者の視点を取り入れて成果を示す
上に書いたとおり、マネージメントする立場の人々は常に忙しく、部下が取り組んだこと、達成したことをすべて把握していることは難しいといえます。
そのため、フィードバックが(人事)評価の対象となる以上は、自分の功績について上司にきちんとわかってもらう必要があります。
「わたしはこんなことをしました!」「XXを達成しました!」と主観で伝えることに加えて、第三者からそれに対する根拠や裏付けがあると、功績についてマネージメント側に認識してもらえやすくなる気がします。
フィードバックを頼むとき、自分への評価に加えて、それを裏付ける事例やストーリーを簡潔に書いてもらうようにお願いすることで、客観的な視点をもとに自分の成果について示すことにつながります。
ここでは会社員の視点で紹介しましたが、このことは自営業の方にも通じるところがあるのではないでしょうか。自分のサービスの特徴について「わたしのサービスはこれが売りです!」「これを達成しました!」と伝える他に、お客さまからそれを裏付けるフィードバックやコメント(例:そのサービスがどのように役立っているのか)があると、主張に信憑性が増すことでしょう。
日頃からフィードバックを心がけることのメリット
フィードバックは、それを受ける側の自己開発や目標達成をサポートする効果があることは上でお伝えしました。では、フィードバックをする側にとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか?
日頃から適切なタイミングでフィードバックを行うことは、信頼関係の構築に繋がるのではないかと思います。ここで言うフィードバックは、年に数度の人事面談で行われるような公式なフィードバックに限りません。
「XXの時、XXな点がとてもよかったと思います。」「この点について、XXのため、次回はもっとこうした方が良いかもしれないと思いました。」「このようにしてもらえると、チームにとって助かります。」など、インフォーマルなフィードバックを想定しています。
ネガティブなフィードバックの場合は、あまり間を置かず、適切なタイミングでフィードバックと対話を重ねておくことで、その内容について時間をかけて相手と話し合うことができますし、その結果、解決策がうまれることもあるかもしれません。フィードバックの内容について、日頃から具体的な話し合いがあった場合には、評価の際に、フィードバックは受け入れられやすくなるのではないでしょうか。
ポジティブなフィードバックを心がけることもまた、信頼関係の構築に大いに役立つと言えそうです。気付いた点、良かった点を素早くまとめて伝えることで、「ああ、この人はわたしのこういうところを見てくれていたのか。」と相手に気づいてもらえることもあるかもしれません。
さらに、日頃からのフィードバックを心がけることで私が感じるメリットは、人の性質や能力について、観察する力が増し、言語化できるようになったことです。相手に伝えるには、実に色々なことを考慮した上で、言語化するプロセスがあると思います。例えば次のような問いがあります。
- どこが良かった(良くなかった)?
- なぜ良かった?根拠は?
- なぜそれを伝える?
- 伝えることでどのような影響がある?
- いつ伝えたら良いだろう?
- どう伝えるのが良いだろう?
フィードバックをすることは、このように様々な問いについて考えるプロセスがあり、頭と心をフルに使います。だからこそ、自分にとっても、また相手にとっても、成長に必要なプロセスであるのだと私は考えています。
おわりに
アメリカで暮らし始めて、フィードバックを受ける機会はもちろん、することも増したように思います。
大学院時代、いつも鋭い視点でコメントをくれたアメリカ人の教授は、私にはなかった視点や考え方を見せてくれました。フィードバックを読むとき、時に心にぐさっとくる時もあり、消化するためにはさらなる対話が必要であったり、時間がかかることもありました。
現在の職場では、日頃からよくフィードバックを心がけている先輩職員を見て、ポジティブなフィードバックを適切に行うことは、モチベーションの向上や信頼関係の構築につながることを、身をもって体験してきました。
フィードバックは、(人事)評価の目的で使われるもののみならず、仕事の質やそのプロセスを良くしていくためのコミュニケーションや能力開発のツールであると思っています。
フィードバックを受けることもすることも、時に緊張することではあります。しかし、それもコミュニケーションの一つ。誠実で、オープンにフィードバックを交わす文化が、もっと広まれば良いと思い、この記事を書きました!
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